令和6年1月に能登半島沿岸部において大地震が発生しました。
被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げますと共に、
災害の犠牲になられた方々の冥福をお祈りします。
令和5年10月に中東ガザ地区と以国において武力衝突が起きました。
当事者双方には怒りと恨み心による暴力を自制し、報復の連鎖を止めることを望みます。
真の問題解決は人間平等の理念に立ち返った相互理解と共助の努力によるしかないと考えます。
この不幸な武力衝突の犠牲になられた方々の冥福をお祈りします。
令和4年2月下旬より東ヨーロッパで戦争がはじまりました。
戦争は人間の過ちの中で最も罪の重いものです。
尊い命が犠牲になり、罪の無い多くの人々に不安と悲しみを与えます。
当事者のあいだで冷静な話し合いの場が持たれ、
一刻も早く停戦と和平が実現されますようお祈りいたします。
令和六年正月に次のような挨拶状を檀信徒の方々にお送りしました。
令和六年 年始のご挨拶
令和六年の新年を迎えました。
大晦日の福井は強い雨が降りましたが、除夜の鐘が鳴る頃には雨も弱まり、
当山では静かな元旦を迎えることができました。
昨年は新型コロナ感染症の扱いが5類に移行し、日本全体が活気を取り戻していく気配が感じられました。
一方、国外を見渡しますと、東欧の戦争は停戦の見込みが立たず、
秋には中東において大きな武力紛争が起きました。
この一年をふり返りながら、
元旦の護摩では国内の息災安穏と国外の争いの一刻も早い解決を祈念させて頂いた次第です。
しかしながら穏やかな元旦は夕刻を迎えた頃に一変しました。
午後四時過ぎに能登半島の沿岸部を震源とする大地震が発生しました。
能登半島では最大震度7を記録した地域があり、福井にいる私共も震度5の強い揺れを長く感じました。
石川、富山、新潟では多くの方々が被災され甚大な被害が発生しています。
災害に遭われた方々の救助活動が迅速に進みますことをお祈りしております。
被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
さて当山では元旦の大護摩の時に「御籤(みくじ)」をひきます。
昨年の話に戻り恐縮ですが昨年(令和五年)は三〇番の半吉でした。
昨年の年始のご挨拶に記しましたが改めましてこの「御籤」に記された漢詩と意訳を載せます。
令和5年の挨拶状
(漢詩)
仙鶴(せんかく)高枝(こうし)に立つ。 他を防ぐ暗箭((あんせん) 虧 (かくる)を。
井畔(せんはん)剛刀(ごうとう)利なり。 戸内(こない)さらに危うきを防ぐ。
(意訳 住職による解釈)
『高い枝に鶴が立っている。
この美しい鳥を人が捕らえようとしているが、それを防ぐ道具がそろわない。
これはまるで井戸に落ちかけて登ろうとするところを刀を持った相手が待ち構え、
前にも後ろにも進めない状況に陥っている時のようだ。
これらの譬えのように身中に危うき事が隠れているかもしれない。
控えめに慎重に身を処し、これらを防ぐ事を心がけよ』
昨年のご挨拶では前記の『身中の危うき事』には触れませんでしたが、
昨年は政治の不祥事、中東での新たな紛争等、当にこの言葉が当てはまる出来事が起きています。
政治資金の一部が未公開のまま扱われていた事件。
それから、長く抑圧を受けていた中東ガザ地区の難民が以国(イスラエル)と武力衝突を引き起こした事件。
詳細は記しませんが、これらの原因に思いを向けますと、
それぞれ法や人道に則った扱いが為されていたか疑念を抱かざるを得ません。
次に本年(令和六年)の御籤をご紹介します。
今年は三五番の吉でした。
この「御籤」に記された漢詩と意訳を載せます。
(漢詩)
財鹿(ざいろく)すべからく箭(せん)に乗すべし。 胡僧(こそう)路を引いて帰る。
道(どう)に遇うて仙籍(せんせき)を同じうす。 光華(こうか)晩暉(ばんき)に映ず。
(意訳 住職による解釈)
『鹿を狩るには優れた矢を用いるべきであり、同じく、
物事を成し遂げようとするならば善を為すに及ぶものはない。
高徳の師にしたがい正道を学び、師と同じく徳行を顕す心境を目指すことである。
己を磨く永い修養の日々をへて光華に満たされるのである。』
さまざまな問題が我々の眼前に現れているが、これらを解決するためには、物事の正しいあり方を理解し、
その理想を顕すほどに自分たちを高めていかなければならない。
永い精進が必用であるが、その努力の末に大きな光に満たされるのである。
この漢詩の文言の通りだと思います。
先に二つの事例を挙げましたが、その後者の方、
中東の紛争は当事者の怒りの念や恨み心による報復の連鎖に陥っています。
この問題を解決するためには、
紛争の当事者双方が正道の根本に立ち戻って問題の解決に努力するしかないでしょう。
互いを理解する努力、怒りや恨みの心を拭い去っていく努力です。
仏教その他、普遍的な宗教は奪うことでは無く分かち合うことを教えています。
気の毒な人々に愛を与える心、慈しむ心を教えています。
そして広い心の涵養を説いています。
赦す心です。
この正道の根本に立ち戻らなければなりません。
今回も長いお話しになってしまいました。
(ここからは檀信徒向けの記述のため省略)
本年が、皆様のこころの旅の有意義な一年となりますよう、お祈り申し上げます。
令和六年正月
西山光照律寺 住職 白﨑良演
追記
令和六年正月二日、国内の空港で航空機の衝突事故が起きました。
大事故であったにもかかわらず、衝突事故を遭った一方の民間航空機では、
乗員と乗客の冷静な対応で全員の安全確保がなされました。
ある新聞には「日ごろの避難誘導の訓練を踏まえた乗員の冷静な判断が全員脱出の成功につながったのではないか」
という元客室乗務員のコメントが掲載されていました。
もう一方の航空機では乗員の方々が犠牲になられました。
能登半島地震の被災地へ救援物資を運ぶため、飛び立とうとしていた所を事故に遭われたと報道されています。
公務中に事故に遭われ命を落とした方々に対して深く哀悼の意を表するものです。
航空機事故の犠牲になられた方々の冥福をお祈りいたします。
福井大仏・西山光照寺 住職